オーダースーツの生地選びは楽しい時間で、お客様も迷われながらもお好みの生地を決められます。
生地の素材や種類によってスーツの印象は大きく変わるため、素材の知識があるか否かで出来上がるスーツも変化していきます。
様々な生地メーカーが多彩な色・柄・素材の生地を生み出しており、生地を選ぶとなるとほとんどの方が迷われるはずです。
今回はスーツをオーダーする際に役に立つ「スーツの生地の種類と素材、その選び方」について、福岡天神大名のオーダースーツ専門店「福岡えびすテーラー」のスタッフがご紹介いたします。
目次
スーツ生地の「素材」について
まず、スーツの選び方を語る上で外せないのがスーツ生地の「素材」です。
生地を構成する素材次第でスーツの風合いや手触り、重量感などの多数の要素が変化します。
スーツ生地では主に以下の素材が使用されています。
・ウール(羊毛)
・コットン(綿)
・リネン(麻)
・モヘア(ヤギの毛)
・シルク(絹)
・ポリエステル(化学繊維)
・ポリウレタン(生地に伸縮性をもたらす)
それぞれの素材の特徴についてご詳細をご説明します。
「ウール」はスーツ生地の基本
ほとんどのスーツ生地には天然素材であるウール(羊毛)が使用されています。
天然素材でありながら衣類としての機能性を大きくカバーしており、スーツを語る上でウールは外すことのできない重要な素材です。
では「ウールの持つ機能性とは何なのか?」ということですが、ウールは以下のような特徴を備えています。
・保温性、吸湿性に優れる
・弾力があり、シワの回復、着心地の向上に貢献
・肌馴染みが良い
・比較的汚れにくい・汚れが落ちやすい
などなど。
これらのような特徴を備えており、実際にスーツ生地のほとんどにはウールが使用されています。
基本となるウールですが、その糸の細さや織り方によっても雰囲気が大きく変化します。
質感の違いについてはこちらでも触れておりますのでご覧ください。
「コットン」(綿)はカジュアルなスーツ生地
コットン(綿)は肌着やシャツなど、肌と直接触れ合う衣類によく使用されています。
手触りが良く、吸湿性に優れるといった特徴を備えています。
スーツ生地として使用される場合、独特の柔らかな風合いとシワ、経年変化を楽しむことが出来ます。
ビジネス向きというより、カジュアルなシーンで着用されるセットアップスーツなどによく使用されています。
「リネン」生地はさわやかなツヤと味のあるシワが特徴
リネンは夏場に着用するシャツや寝具に利用されることが多いです。
コシがあり、通気性が高く、暑い季節には肌に密着しないので快適な着心地が味わえます。
スーツ生地として使用される場合、独特の風合いとツヤが生まれるので、オシャレな方向けの生地となります。
鮮やかな色合いの生地も多いので、当店にいらっしゃるお客様でも注目される方が多いです。
「モヘア」は清涼感と高級感のあるツヤを持つ
ウールと比較すると太い糸が多いので触り心地は硬いのですが、独特の清涼感と光沢が楽しめます。
スーツとして着用する場合は主に春夏向けの生地に多く、高級感のあるツヤがあるので、春夏のスーツで良い一着を仕立てたいと考えられている方におすすめです。
「シルク」はラグジュアリーで高級感のある素材
美しい光沢感に加え、軽く、柔らかい贅沢な素材です。
スーツ生地として使用する場合、高級感のあるツヤを楽しみたいときにおすすめです。
主にパーティー用のスーツやジャケットに使用されています。
「ポリエステル」はお手頃で耐久性に優れる
強度と速乾性に優れた化学繊維で比較的手ごろな価格で入手できます。
スーツとして使用する場合、コストを抑えてオーダーしたい方、スーツを使い込みたい方におすすめです。
スーツ生地の特徴を左右する「織り方」について
続いてはスーツ生地の「織り方」に焦点を当てていきます。
生地の織り方には大きく3種類あり「平織」「綾織」「朱子織」がありますが、スーツに使用される生地はほとんどが前者の2つとなります。
生地の織り方についても詳細をご紹介致します。
「平織り」の生地はマットな質感が特徴
経糸と緯糸ともに1本ずつ交互に交差して織られた生地になり、春夏ものの生地に多く見られます。
軽量で、通気性の高いものが多く、マットな質感を楽しむことができます。
「綾織」の生地は美しいツヤと色合いを楽しめる
平織りに比べて糸の交差回数が少なく、隙間の少ない生地となります。
スーツ生地のツヤを楽しむにはこちらの綾織の生地を選ばれるのがおすすめです。
オールシーズン生地や秋冬ものの生地に多く見られる織り方です。
「朱子織」はタキシードやネクタイなどに
綾織りに比べて糸を飛ばして織る距離が長いため、すべすべとしており、強い光沢があります。
主にネクタイやタキシードの拝絹に使用されます。
「柄」によってスーツ生地の印象が変わる
スーツの生地は色合いや素材以外にも「柄」によって印象が大きく変わってきます。
スーツ生地の柄については大きく3種類に分けられ「無地」「ストライプ」「チェック」があります。
続いてはスーツ生地に主に使用される柄についてご紹介していきます。
「無地」はまず最初に持っておきたい
スーツ生地の柄の基本となるのが「無地」です。
その生地が持つ質感や色合いを味わいやすい柄であり、メーカーや生地ごとに特徴があります。
着用出来る場面も広い為、スーツを手に入れる際はまず無地の生地を中心に集めておくとよいでしょう。
初めてのオーダースーツでお悩みの方はこちらの記事をご覧ください。
「ピンストライプ」は取り入れやすいストライプ
針の頭を並べたようなストライプです。
ストライプは一般的に細くなるほどフォーマル寄りとなり、ビジネス向きのストライプとなります。
「ペンシルストライプ」はストライプらしさがある
鉛筆で線を引いたようなストライプで、当店でも人気の高いストライプ柄となります。
ストライプの中でも生地の種類が豊富なため、ストライプ生地でスーツをお探しの方におすすめです。
「チョークストライプ」は主張が強め
チョークで書いたような太目のストライプが特徴です。
主張の強い柄となりますので、インパクトのあるスーツをお探しの方におすすめです。
「シャドーストライプ」はさりげないストライプ
ツヤのある生地に比較的多くみられるのがシャドーストライプです。
遠目では無地に見えるのですが、近くで見ると立体感のあるストライプが楽しめます。
高級感のある生地でスーツをお探しの方におすすめです。
「ウィンドーペン」はシンプルなチェック柄
その名の通り、窓枠のようなチェック柄です。
ストライプと比較して柔らかな雰囲気であり、ややカジュアルよりとなります。
「グレンチェック」はお洒落な印象に
細かい格子柄を組み合わせたスーツ生地です。
チェックの大きさや太さによってさまざまな雰囲気を醸し出します。
「ハウンドトゥース」はこだわりのある方におすすめ
千鳥格子とよばれる柄で遠目では無地に見えます。
細かい柄が多く、上品な印象となります。
スーツ生地を選ぶ上で参考にしたい要素
スーツの生地を選ぶ上で、いくつか比較対象となる要素があります。
主に以下の要素が比較対象となりやすいです。
・ツヤ
・手触りの良さ
・重量
・ハリコシ
・色合い
それぞれの特徴についてもご紹介していきます。
スーツ生地の「ツヤ」は高級感を左右する
ポリエステルを混紡したお手頃な生地でもツヤは見られますが、ツヤの強い生地は高級生地によく見られます。
中でも上質な生地になるほど、ツヤが細やかに、しっとりとした風合いになります。
シルクやリネンなど、ツヤのある素材を織り込んでツヤを出す手法もあります。
その場合はキラキラとしたツヤになることが多いです。
「手触り」はスーツを着用するならこだわりたい
使用する糸が細かくなるほど手触りは滑らかになります。
また、先程ご紹介した生地の織り方次第でも手触りは変化します。
糸が細かく、綾織りの生地になると手触りが良い傾向になり、ウールよりも細かい糸が多いカシミアなどを使用すればさらに手触りは良くなります。
「重量」は着用シーズンを考える時に重要
生地はそれぞれ目付(重量)が異なり、おおよそシーズンごとに適正な目付が変化します。
平織の生地であれば目付が300g前後でオールシーズン使用できる生地だと言われます。
綾織の生地であれば250g前後の生地にオールシーズン生地が多いです。
「ハリコシ」はシルエットを左右する
英国の生地に多いのですが、生地に触れたときにハリコシを感じる生地があります。
シワに強いものが多く、頑丈な印象を受けます。
スーツを着用する際もシルエットが構築的になりやすく、ハリコシのある生地は仕立て映えのする生地が多いです。
「色合い」はスーツの印象を大きく変える
同じネイビーの無地であっても、メーカーごとに、もしくは生地の種類ごとに色合いが異なってきます。
高級感のあるスーツとなると、色合いに深みが出るように複数色の糸を使用して織りあげられているものが多くなります。
「立体感」は高級生地ならではのディテール
シャドーストライプやウィンドウペン柄のスーツ生地によく見られますが、平面的なデザインと立体的なデザインの生地があります。
高級な生地になると立体的なストライプなどの生地が多くなる傾向にあります。
生産国によってスーツ生地の特徴が変化
スーツ生地の選び方を取り上げるにおいて、よく話題に上がるのが「生地の生産地」です。
「イギリス」と「イタリア」が中心となって上質な生地を生み出しています。
それぞれの特徴についてもご紹介します。
「イギリス」のスーツ生地は仕立て映えするものが多い
手触りは比較的硬めのものが多く、着用に慣れないうちは着心地が重く感じられることが多いです。
ですが、シルエットは美しく仕上がる傾向にあり、着用を重ねると身体に馴染んできます。
耐久性に優れたものも多く、スーツ生地を長い目で見て選ぶならばイギリス生地はおすすめです。
「イタリア」のスーツ生地は柔らかくツヤがある
イギリス生地よりのハリコシに優れた玄人向けの生地も生産していますが、ほとんどのイタリア生地はツヤがあり滑らかな手触りが特徴です。
体型に馴染みやすくストレッチ性に優れた生地も多いので、癖になる方も多いです。
スーツ生地の選び方をサポート「目的ごとのおすすめ生地メーカー」
スーツ生地の素材や選び方についてご紹介しましたが、具体的にスーツ生地を選ぶとなると迷う方も多いでしょう。
最後に「目的ごとにおすすめのスーツ生地」についてご紹介します。
「ストレッチ性」に優れたスーツ生地を選ぶなら?
着用感が向上するため、スーツ生地でも人気のある機能が「ストレッチ性」です。
ストレッチ性に重点を置くのであれば「Tollegno」「Trabaldo Togna」の生地がおすすめです。
トレーニョの「3D Wool」は伸縮性に優れたポリウレタン(スキニーデニムなどによく使用されます)を混紡することで、ストレッチ性を実現しています。
一方でトーニャの生地はウールの持つ機能性を最大限活用し(ウール100%)、高いストレッチ性と美しさを両立しています。
「手触り」にこだわったスーツ生地を選ぶなら?
手触りの良い生地は糸が細かい傾向にあります。
実用性も考慮したスーツ生地であれば「Super130’s~150’s」あたりの生地がおすすめです。
さらに細かい糸を使用した生地もありますので、手触りを追求するのであれば選ばれてみても良いでしょう。
一例を挙げるなら「Drago」の生地は細かなウールを使用し手触りに優れています。
「機能性を重視」したスーツ生地を選ぶなら?
撥水性、防シワ、ストレッチ性など機能性を重視したスーツ生地もあります。
カノニコの「Super Sonic」は上記のような機能性を兼ね備えた頼りがいのある生地です。
詳細はこちらの生地でもご紹介していますので、ご参考になれば幸いです。
「ツヤ感のある」生地が欲しいなら?
ツヤを重視する場合、手触り同様に糸が細かい生地を選ばれると良いツヤを楽しめます。
加えて、シルクなど光沢の強い素材を混紡してもツヤが強く出る生地もあります。
高級生地の代表とも言える「Ermenegildo Zegna」のスーツはツヤの強い生地が多いです。
ゼニアについてはこちらの記事でもご紹介しています。
「シワに強いハリコシ」生地を選ぶなら?
英国の生地にハリコシのある生地が多い傾向にあります。
初めての英国生地であれば「John Foster」がおすすめです。
しっかりとしたハリコシをお求めであれば「Harrisons」の生地も外せません。
まとめ
今回はスーツ生地の素材や種類、その選び方についてご紹介しました。
大切なシーンから日常まで、役立つスーツをオーダーする上で参考になれば幸いです。
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