「クリーニングはどれくらいの頻度で出せばいいの?」
繊維業に15年ほど携わっていると、時々聞かれる質問です。
オーダースーツの場合、クリーニングに出せば綺麗になると分かっていても出せば出すほど生地が傷む気がするという理由で、なかなかクリーニングに出されない方もいらっしゃいます。
今日はそのあたりの議論に踏み込んでみたいと思います。
目次
昔と今、溶剤の違い
まずクリーニングに関する話でよく聞くのが、クリーニングに出すと痛みが早くなるのではないかということです。
これに関しては、その通りとも言えますし、そうでないとも言えます。
その昔は強い溶剤の使用などが理由で、クリーニングに出すとスーツはとても傷むと言われていました。
ただし現在は、溶剤や技術の進歩などによりクリーニングに出すことによるオーダースーツの痛みというのは減ってきています。
しかし、生地が洗いにかかることの物理的な摩耗は0にはならないため、頻繁過ぎるクリーニングは生地の摩耗につながることはあります。
クリーニングに出すべき理由
オーダースーツはクリーニングに出しすぎることで生地は摩耗していくので、摩耗だけを考えるのであれば出さないに越したことはないのですが、実際の着用では、シワ・汗・汚れ・食べかすなど他の要因も関係してきます。
オーダースーツの主原料であるウールには、自然の消臭効果や形状回復機能があります。着用後ハンガーにかけておくと、形はある程度元に戻ります。
しかしクリーニングに出さずに同じスーツを着続けると、本来のプレスが落ちてきて回復不可能なクセがついてしまうことがあります。定期的にクリーニングに出すことで、スーツの本来あるべき形に戻すことができます。
臭いについてはハンガーに吊るして陰干しすることで臭いはかなり飛びます。
ただし、汚れについてはどうしようもありません。汗や食べかすなどはそのまま放置しておくと酸化・変色して取り返しのつかないことになってしまいます。
ですから、ある程度の頻度ではクリーニングに出した方が、スーツ自体が長持ちしますし、何より快適にかっこよく着ることができます。
クリーニングに出す最適な頻度
汗による汚れの量を考えると、季節によってクリーニング頻度を変えることをおすすめします。
おすすめは、秋冬はひと月かふた月に1回、春夏は2週間から1ケ月に1回くらいが最適だと思います。
もちろんこれは「1週間のうち何日着るか」、「何着で着回すか」によっても大きく変わってきます。
スーツならセットで出す
クリーニングにより少しずつではありますが、摩耗や経年感が出てきます。オーダースーツはもちろん既製品スーツであっても、上下セットのものは同じ頻度でクリーニングに出すことをおすすめします。
ボタンが割れる!?
クリーニングに出すとボタンが割れたというお話をよく聞きます。
既製品スーツならプラスチックのボタンが使われることが多く、オーダースーツではプラスチックに加え、本水牛の角やナットボタンなどの天然素材のボタンが使われることも多くあります。
天然素材であるナットボタン、本水牛の角、木などは割れる場合もあります。ではプラスティックボタンは割れないのかというと、これも割れます。
結論を言うと「素材はどうあれ割れる時には割れる」ということです。
割れる原因は様々ですが、例えば本水牛の場合模様のあたりに水分が入り込み乾燥の段階で割れることもあるようです。
クリーニング屋さんによっては、ボタンの割れは保証してくれるところと保証してくれないところがあります。
一般的な商品の場合万が一ボタンが割れた場合、クリーニング屋さんに相談されるのが一番ですが、広島えびすテーラーでご購入いただいたオーダースーツについては、割れたボタンは無料で交換させていただきますので、まずは当店までお持ちください。
仕上がってきたスーツの保管
スーツをクリーニングに出すと、ほとんどの場合ハンガーにかかり透明にビニール袋がかかった状態で仕上がってきます。
このまま長期保管すると不具合があるのでご説明します。
ハンガー
クリーニングで付いてくるハンガーは一般的に型の厚みが薄いものがおおいです。最近では針金ハンガーは少なくなりましたが、それでもプラスティックの薄いものが多いようです。
スーツは人間の体が来た時に一番自然な形になるように仕立てられているので、肩の厚みの薄いハンガーだと変なシワがよったりハンガージワができたりすることがあります。
もしお持ちでしたら肩の厚みのあるハンガーにかけ替えることをおすすめします。
ビニールの袋
透明のビニールは一見良いようですが、欠点としては通気性が全くない事です。
スーツに通気性が悪いビニールをかぶせておくとと虫食いの原因になります。クリーニングから持ち帰った後は、オーダースーツなどの購入時に一緒にお渡ししている不織布の洋服カバーなど通気性のあるカバーをかぶせて保管してください。
また保管するクローゼットは時々空けて空気を入れ替えるとなお良いです。
普段のケア
オーダースーツのケアはクリーニングに出す以外にも、普段でできることもあります。
また別の回にお話ししようかと思っていますが、まず臭いを飛ばすためにはハンガーにかけて一晩屋外の軒下などに吊るしておくのはとても良い方法です。
その他、着ない時には方の厚みのあるハンガーにかけることや、日々のブラッシングも欠かせません。
ブラッシングはされない方も多くお見受けしますが、馬毛のブラシなどを一本持っておいて一日の終わりにブラッシングするとホコリなどが落ちると同時に、ウールの毛並みもそろうため均一なツヤがよみがえります。
まとめ
まずはブラシ掛けや陰干しなどの日ごろのケアは大切ですが、やはり時々はクリーニングに出した方がスーツ自体を快適に着ることができます。
極端に多い頻度でクリーニングに出す必要はないですが、やはり時々はクリーニングに出して、愛着のあるオーダースーツをリフレッシュさせてみましょう。
他にもメンテナンスなどで分からないことがありましたら、「広島えびすテーラー」までお気軽にお尋ねください。