オーダースーツのスタイリングには欠かせない重要アイテム『革靴』

投稿日:インフォメーション

「できるだけ高価な本格靴を選べ」と若かりし頃、アパレルの諸先輩方から本当によく言われたものです。

当時は「靴なんて何でも…」とあまり気にも留めない言葉でしたが、ようやくその真意が素直に理解できるような年齢となってきました。

そこで、今回はオーダーシューズも扱っている当店から、ほんの少しだけ『革靴』についてお話させていただきます。

製法の違いと特徴

まずは基本的な靴の作り方や種類などをご紹介いたします。

手縫いによる製法(グッドイヤー・ウェルト、マッケイ式)

いわゆるビスポークシューズと呼ばれるフルオーダーの靴。

およそ250工程を必要とし100%ハンドメイドの最もクラッシックを表現できる靴のことであり、グッドイヤー・ウェルトとマッケイ式の2種類に分けらます。

オーダースーツなどでも、よく耳にする「ビスポーク」という言葉は「ビスポークシューズ(注文靴)」から発生した言葉となります。

グッドイヤー・ウェルト式(機械式)

グッドイヤー・ウェルト式は従来手縫いで行われていた甲側と底側を機械で接合し手縫いの伝統を機械に頼った方式で基本的には手縫いと同じ作り方で2重の底縫いが特徴で甲と中底を最初に縫い、さらに本底に縫いつける製法です。

底の交換が何度でも可能で底の隙間の詰め物が他の製法に比べ多いため足への馴染みが極めて良く、足を入れるたびに詰め物が沈み込み人の足形に変形し履きやすさに繋がっていきます。

グッドイヤー式を見分けるコツはコバ(靴底の縁が外側にせり出している部分)を確かめ、革の糸目が付いていればグッドイヤー・ウェルト式となります。

ただし近年では糸目だけを真似たものや、糸目の代わりに糸目らしき模様だけを付けた曖昧なものも多くあるので注意が必要です。

またグッドイヤー・ウェルト式の靴の特徴として、足を入れたとき重くずっしりとした重量感があり幅の広いコバに太い糸目があるのが本当のグッドイヤー式の証となります。

マッケイ式(機械式)

マッケイ式は甲と中底を一度に機会で縫いつける製法であり当初は軍靴の量産のために考案されたものです。

見分け方としては全部一度に縫いつけられているため、靴の中(内側)の先端部分に縫い目が露出しているのが目安となります。

靴の内側に縫い目が見えればマッケイ式となります。イタリアの既成靴などには多い製法で、靴底(ソール)の返りが良く短期間で足に馴染みやすいのが特徴です。

セメント式(機械式)

大量生産を目的に甲と底を接着剤を使って貼り付けている製法で、クラッシックな装いには最も避けるべき靴とも言われています。

永く履いているうちに底が剥がれてしまう靴は間違いなくこのセメント式となります。

ヨーロッパのブランド品などは夏用の靴に、このセメント式を用いることも非常に多いです。

靴の見極め方としてはセメント式の靴底でコンクリートを叩くと木槌で叩いたような軽い音がし、グッドイヤー・ウェルトの靴はコンクリートを叩くとごつごつとした重い音がします。

ちなみに上から3つ(手縫いによる製法、グッドイヤー・ウェルト、マッケイ式)までは一般的に「本格靴」というカテゴリーに部類とされ日々のメンテナンス次第では10年でも20年でも愛用できると言われています。

イギリスでは社会人になるとスーツより、まず先に高価な靴を購入するのが習慣のようです。

彼らは身だしなみを整えるために靴がいかに大切な役割を果たすか、よく心得ているからだと思います。流石は英国紳士ですね。

スーツに合わせる靴の種類

スーツスタイルに最も合う靴とは?

ストレートチップ

甲の部分に一文字の飾り紐がついた靴で最もクラッシックでフォーマル性の高いデザインとなります。

黒のストレートチップに濃紺かチャコールグレイのスーツ、白いドレスシャツ、紺地に小さな白い水玉のネクタイをコーディネートすれば大袈裟でなく世界中のパーティーの場でも通用します。

プレインキャップトゥ

横一文字の飾りの中に小さな円形の飾り模様が入っている靴で、この靴もスーツによく似合うデザインです。

同じスタイルでも甲の部分にも飾りがついたものもありますが、ややフォーマル性が劣るため、よりフォーマルな場での着用は少し注意が必要です。

プレイントゥ

甲と爪先の部分に何も飾りがついていないシンプルなデザインで短靴の基本ではありますが、シンプルすぎて少し地味な印象となります。

ウィングチップ

甲の部分に穴飾りがたくさんついている靴で飾り穴は元々は水はけをよくするために生まれたデザインです。

ゴルフシューズなどにもこのデザインが多く採用されているのは同じ理由からのようです。

イギリスやイタリアのウィングチップの穴飾りの数はおよそ150個ですが、アメリカのウィングチップの穴飾りはさらに多いのが特徴です。

ヨーロッパの考えるウィングチップの穴飾りは、それぞれの国の伝統的な柄や模様のモチーフが多いですが、アメリカの穴飾りは自由奔放なデザインが目立ちます。

ちなみに穴の大きさが一番大きい国は、ハンガリー、次がイギリス、その次がイタリアの順だそうです。

モンク・ストラップ

紐なしの靴で唯一スーツスタイルにコーディネートできる靴は、モンク・ストラップだと言われています。

モンクとは修道僧の意味でこの靴は彼らが履いていたものをヒントに考案されました。

甲の部分に太めなベルトと、それを横で留めるバックルが非常に特徴的です。

イギリス、ロンドンのビジネスマンたちはクラシカルなスーツに合わせこの靴のスタイルを楽しんでいるようです。

サイズの選び方(フィッティング)

靴を購入する際(とくにグッドイヤー・ウェルトの靴)は多少きつめに感じるものを選ぶとよいでしょう。

はじめはきつく感じても上質な革であれば革が足形にしっかりと馴染んできます。

左右を足入れし店内を歩き回ることもとても重要なことです。

そして靴選びは足が目一杯膨張している時間帯(アフターファイブ)に購入しましょう。

あとは人間の足は左右の実寸が異なりますので必ずどちらかの大きい足に合わせ選びます。

まとめ

かの「ジョージ・フレイザー(イギリスの社会人類学者)」はこんな言葉を残しています。

「その人が服に気を配っているかを知るには、まず靴を見ればいいのだ」と。

お洒落に対する深い意味合いすべてが集約されているような言葉ですね。

皆様も良いスーツを手に入れた後は、少しだけ足元にも気を配ってみてはいかがでしょうか?

一生の伴侶となる素敵な靴をお選びいただけたらと思います。

ページTOPへ