ボタンはオマケの付属パーツではなくオーダースーツの出来栄えを決める大切な装飾品としての役割も兼ね備えています。
そのためボタンひとつで、オーダースーツを上質かつ上品に見せることができるのです。そこで今回はオーダースーツを格上げするボタンの種類や特徴、選び方について簡単にご紹介いたします。
ボタンの種類
スーツのボタンには多くの種類があり、特にオーダースーツの場合は素材やサイズなど様々な種類の中から選択が可能です。
オーダースーツに使用されるボタンの素材で代表的なものについて簡単にご説明したいと思います。
水牛ボタン
水牛ボタンはボタンの素材の中でも高級とされ、一流のコレクションブランドやオーダースーツに使用されています。
まず、材料となる水牛は主にインドや中国などが原産です。広大な土地の中で主に食用などで飼育されているものが殆どかと思いますが、この水牛の角の部分と一部骨の部分がボタンとして加工されます。
角は主に輪切りにしたものをボタンの型に削りだしたものや角の先の部分をダッフルボタンなどに使用するものなど、ほぼあますことなく使用され、その色の多くは黒です。そのため、水牛ボタンの中でも茶色やベージュなどの明るい色は本数が少なく貴重なため黒よりも高く販売されていることが多いようです。
水牛ボタンは、べっ甲調ボタンなどともいわれ、ワシントン条約以降に使用ができなくなったカメの甲羅、べっ甲に似た柄のものや、流れるようなトラ柄のものなど、ひとつひとつが色柄が違う美しいものがたくさんあります。
デメリットとしては天然物の素材のため、目に見えない小さなヒビなども入りやすく、熱などに弱いため、プラスチックの加工よりも手間ひまがかかります。水牛ボタンの殆どはひとつひとつを職人さんが手で削り仕上げるため機械で作るよりも時間とコストがかかりますが製品に負担がかからず表面の仕上がりが美しいのが特徴です。
ただし、アイロンなどの熱やクリーニングの際のプレスがあたるとツヤがとんでしまうという注意点もあり、クリーニングに出す際にはボタンの保護をお願いするようにしましょう。また水分によっても表面の油分がとんでしまいツヤがなくなってしまい含水した後に乾燥する際に小さなヒビの原因になりボタンが割れやすくなるので水洗いは不向きです。
貝ボタン
貝ボタンの原料は、高瀬貝、白蝶貝、黒蝶貝、茶蝶貝、メキシコあわび貝などの貝殻から作られているボタンです。
これらの多くは南太平洋の熱帯地域で採取され日本へ輸入してボタンや装飾品に加工されています。また、二枚貝の蝶貝は真珠の母貝として知られており、特に白蝶貝は希少性が高く高級品として取り扱われています。
光の当て方や角度によって様々な光沢を見せてくれる貝ボタンは、高級感と共に軽やかさや涼しさを与えてくれます。貝ボタンは素材の特性上、色合いやパールの輝き方に個体差があり形状や厚さにも若干のバラつきが多く割れやすいといった特徴もございます。
ナットボタン
ナットボタンはボタンの中ではとても幅広く使用されている素材です。
ナットボタンはタグアボタンとも言われ、原材料はタグア椰子という椰子の実から作るボタンです。タグア椰子は、主に南米のエクアドルやコロンビアで栽培されており、熱帯雨林の中で育つ植物です。
この素材が注目されるポイントはその柄がまるで象牙のような柄であることから、植物の象牙とも言われているからです。象牙のようなやわらかいアイボリーカラーと流線型の柄はとても上品な質感で人気があります。
また、エコ素材としても注目され、土にかえる素材としてナチュラル志向のアパレルブランドなどにも愛用されています。勿論、ボタン以外にもチェスの駒や民芸品やアクセサリーなどにも使用され、その加工は多岐にわたっています。
ボタンとしての最大の特長は前述のとおり、やわらかい柄です。
特に薄い色のボタンが分かり易いのですが、ひとつひとつ柄が違いますが、それがまた天然素材らしさを感じさせます。
ナットボタンは染めることでいろいろな色にすることができるので、元々の色はアイボリーカラーですが、ボタンとして使用する場合の多くは洋服のカラーに合わせて染色してから使用されることが多いです。
天然の素材のため、濃淡があり自然なグラデーションになることも人気の理由です。また、その染色方法には2度染色することでフチと中央をツートンカラーで表現することも可能です。取扱いは椰子の実のため、長時間水につけると含水します。
そのため急激に乾燥したりすると割れの原因になります。クリーニングの際は水洗いを避けて石油系ドライクリーニングをおすすめします。
くるみボタン
くるみボタンとは、芯になる素材を、表面を布・皮革・編地などで包んだボタンの総称で形状は半球型や、ボタン穴の空いた物、飾りの付いた物など様々です。
くるみボタンの芯には、絹を丸めたものやプラスチック、金属などが用いられ、くるむ素材も布地を使用するのが一般的ですが工夫次第で色柄が無限に広がるのも最大の特徴です。
ハンドメイドの温もりを感じられるボタンです。
練りボタン(プラスティックボタン)
合成樹脂で作られたボタンを総称して練りボタンと呼ばれています。
現在使われているボタンの殆どはこのタイプのものとなり、その特徴としては摩擦に強く丈夫で割れにくく、加工がしやすく、染めやすく、コスト的にも優れたボタンのため最も多く普及しています。
色柄も、無地、光沢感の強いもの、マーブル調などバリエーションも様々です。
ビジネススーツ向けのボタンとは
当然ながらボタンとスーツは相性がありスーツに見合ったボタンを選ぶことが最も重要です。たとえばビジネススーツにつけるボタンならば、スーツの色と同系統の水牛ボタンが上品に映ります。
あとコーディネートされるシューズやベルトなどと同系色にするとより上手く纏まると思います。
水牛ボタンには『ツヤあり』『ツヤなし』があり、ツヤありのほうがより艶やかな高級感を演出することができます。
最近では、貝ボタンなどもお選びになる方も増え、光沢のある生地には相性抜群です。一般的に貝ボタンはシャツによく使われる素材ですが上品な輝きがあるので夏用ジャケットなどにつけると軽快で爽やかな雰囲気が演出できます。
色や種類も数多くあるので生地の色に合わせてお洒落を存分に楽しみましょう。
カジュアルに着こなすなら
カジュアルジャケットに使うボタンであれば、ナットボタン、貝ボタン、くるみボタンなどがオススメです。
ナットボタンの持つ軽やかな雰囲気は、カジュアルさを演出するのにぴったりです。
ブラウン系のナットボタンは、ネイビー系のジャケットなどとよく合います。ツイード素材などには、レザーのくるみボタンを使用すれば少し無骨でクラッシックな印象も与えることができると思います。
まとめ
ボタンはオーダースーツのデザインや仕上がりを決める重要な役割を果たします。
ビジネス、プライベートとそれぞれの場面にふさわしいお好みのボタンを選んでスーツスタイルの着こなしを更にグレードアップさせていきましょう。