スコットランドの名門生地ブランド【Kynoch カイノック】

投稿日:2021年6月1日 更新日:

スーツをオーダーする際、まず初めに生地を選んでいただきます。その生地選びが一番楽しくもあり、悩ましいところでもあります。

さて今回は私個人的に大がつくほど好きな、推しな生地ブランド【Kynochカイノック】についてお話ししたいと思います。

Kynoch(カイノック)とは

スコットランドの北部、北海に面した美しいボーダーの小さな港町langholm(ラングホルム)で【Kynochカイノック】は1788年に創業されました。

スコットランドの生地ブランドと言うとまだ日本ではマイナーなイメージですが業界では確固たる地位を築いております。

代表格はツイードで有名な《ハリスツイード》もスコットランドの西にあるハリス島が産地です。同じくツイードで有名な《LOVATラヴァット》等もスコットランドを代表する生地ブランドです。

「ツイード」とは、イギリスやスコットランドが発祥で太く短い羊の毛を使用した「紡毛糸」を用いて織られ、表面は粗っぽい毛織物のことです。

「紡毛糸」とは、繊維があちこち向いた感じになりツヤは出ないが中に空気がたくさん入り軽くて暖かい糸のことです。ツイードは暖かく防寒性が高いことから、秋冬の素材として代表的な存在です。

【Kynochカイノック】はホームスパンなどツイーデイーなジャケット生地を織り上げるミルで有名です。

「ホームスパン」とは、HOME(家)SPUN(紡いだ)という言葉通り、原毛から手染め、手紡ぎ、手織りによって仕上げる贅沢で暖かな毛織物のことです。

カイノックのデザインの特徴はスコットランドの豊かな自然がベースになっています。多色使いされた杢糸からなるのが特徴的で独特な色の風合いがあり、優しい温もりすら感じるコレクションです。

「自然」を生地に表現する辺りカイノックの技術とデザインの奥深さを感じます。日本ではメジャーなブランドではないですが服飾業界含め洋服好きには強い支持を受けている本格派です。

ここ数年続いているクラシック回帰の中で再び脚光を浴びているブランド【Kynochカイノック】のコレクションをご紹介いたします。

ヘリテージツイストトロピカル – 目付 280g

カイノックを代表する生地《ヘリテージツイスト》目付(めつけ)は395gとヘビー級です。

目付(めつけ)とは、スーツに限らず生地の重さのことを指します。ウールの生地は大体150センチの幅があり、スーツの目付は1.5m×1mの重さを表記しています。

この目付量で春夏秋冬どのシーズンにむいている生地なのかが大体わかります。春夏は一般的には、200g〜260g。秋冬は270g〜360gぐらいがむいていると言われていますがもちろん多少の前後はあります。

今回ご紹介する「トロピカル」はこのヘリテージツイストのコレクションの中で太番手の強撚糸を使用した春夏コレクション。「太番手の強撚糸」とは簡単に説明しますと、太い糸を強くねじり合わせることで強度を上げた糸のことを指します。

このコレクション、目付量を見ても280gと春夏にしては少し重い生地です。早速その魅力をご紹介します。

・ハリとコシがあるスーツ生地で、防シワ性にも優れている。

・最新コレクションはヴィンテージのデットストックを思わせるようなデザインとコシのある生地感が特徴です。

・特にトラウザーズに魅力が詰まってます。

・クリースラインが綺麗に入ります。

・生地にハリがあるのでより綺麗なシルエットを実現できます。(太ももから膝、膝から裾口にかけて“テーパード”のラインを作るには非常に適した素材です)

“テーパード”とはテーパー(taper)英語で、次第に細くなるという意味です。「テーパードパンツ」は、ゆったりとした腰回りからスソに向かって細くなっていくシルエットのパンツのことを指します。美脚効果があり、上品な印象を与えるのでおすすめのシルエットです。

・決してぶれない、よれない真っ直ぐなラインを実現してくれます。

サマードネガルシルクネップ – 目付 280g

ウール、シルク、リネンのような三者混。3つの素材を掛け合わせることによって表情豊かな生地に仕上がります。

今回ご紹介する生地は五者混。コットン48%シルク25%リネン10%ウール10%ナイロン7%と五つの素材を掛け合わせて作られたとても風合いの良い生地です。秋冬ジャケットの定番「ドネガルツイード」の雰囲気を上手く表現しつつ、春夏の着用に耐えうる素材感に仕上がっています。

さて、その生地の魅力は…

・実際に生地を見るととても膨らみがあり立体的な仕上がりを表現してます。

・コットンベースの生地にウールをのせしなやかに表現しています。

・シルクの’ネップ‘がカジュアル感を出しながら上品さを失わないようにしています。

「ネップ」とは、繊維が絡み合ってできた節(糸のかたまり)のことです。リネンやシルクなどの天然素材で糸を作る際には性質の関係で均一な糸にすることが難しく、しばしばこの「ネップ」が見られます。

・ジャケットのみでも存在感がありスーツにすれば今までにない雰囲気を演出できます。

【Kynochカイノック】の魅力がぎっしり詰まったコレクション。今年の秋冬はカイノックのヘリテージでスーツを作ろうかと思案中の今日この頃…

ついでと言ってはなんですが少しここで気の早いお話、カイノックの秋冬生地を軽くご紹介したいと思います。

ライトウェイトツイード – 目付 360g

目付は360gとツイード地としては軽いです(通常ハリスツイード等は400gオーバーが基本)しかしながらその重さを軽く超えるどっしりとした存在感があります。

「ツイード着たいけど重いよね…」と思われていた方でも気楽に羽織ることができるこの生地。

ジャケット単体はもちろん、この質感ならツイードの3ピースにもトライできそうです。

今季の秋冬に是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

最後に

Made in Britain

このヴィンテージ感漂うコレクションラインに一度触れてみて下さい。

存在感のある、クセのある生地ブランド【Kynochカイノック】きっとその魅力をお分かりいただけると思います。

気になる方は是非店頭にて生地に見て触れて愉しんで下さい。

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