近ごろ、街中のスーツ専門店のショーウィンドウのボディやスーツ専門雑誌、テレビ番組など、いたるところで”ダブルブレスト(いわゆるダブルのスーツ)”を目にする機会が増えてきました。
ダブルのスーツというと、およそ30年前の日本のバブル時代のお金持ちのおじ様やコワモテの男性が着ている大きな四角いスーツというイメージをお持ちの方が多いと思います。
当時のダブルはというと、肩幅は通常よりも広く、パッドも厚めで、現在の一般的なスーツのシルエットと比べると全体的にかなり大きめなサイズ感で、野暮ったい印象でした。
しかし、時代とともにダブルのスーツもスタイリッシュなシルエットに変化し、現在では世界的にダブルのスーツに対する印象も大きく変わってきており、ダブルのオーダースーツの依頼をお受けする割合もかなり多くなってきているように思います。
そこで今回はスーツ業界におけるクラシック回帰に伴い、世界的にトレンドになっているダブルのスーツをより詳しく見ていきましょう。
シングルスーツとダブルスーツ
そもそもスーツには大きく分けて”シングル”と”ダブル”の二つがあります。
シングルの正式名称はシングルブレステッドスーツ、一般的には”シングルブレスト”や”シングル”と呼ばれています。これはもともと英国貴族の執務服、上流階級や軍上層部の人たちの制服等がルーツとされているようです。
ダブルブレストは正式にはダブルブレステッドスーツと呼ばれ、”ダブルブレスト”や”ダブル”などと呼ばれています。
諸説ある中の一つですが、主に軍人用に使用されてきたダブルの形は直立する際にどの向きからでも風を防ぐことができるように作られた実用性の高い画期的なデザインだったようです。
そして1900年代に入りやっと現在のダブルのスーツの基本形ができ、一般の人々にも着られるようになりました。
このようにいずれも元々は階級の高い人たちや、軍人が着用していたようです。
双方を比較すると見た目でかなり印象が変わるのがわかりますね。
今回はこのダブルのスーツに焦点を当て、より深く掘り下げて見ていきましょう。
そもそもダブルスーツとは
まず、シングルスーツとの大きな違いがフロントボタンの配列が異なります。シングルはボタンが縦一列に対して、ダブルは縦2列になっています。
さらに、シングルに比べダブルのほうが前身頃の重なる面積が多いのが分かります。ちなみに昔から日本では「両前」と呼ばれています。
またボタンの数やボタンを留める位置で印象も変わります。
インスタを見回してみても、
ボタン位置の異なるデザインもさまざまですが、この”釦6個2つ掛け”が現在の一般的なダブルのスーツのデザインとなっております。
見た目の違いはというと、シングルブレストに比べてVゾーンが狭く、襟もピークドラペルと呼ばれる上に向かってとがっているデザインで、ラペル(襟)の幅も広く大きいのが特徴です。
ダブルスーツのおすすめポイント
前身頃の打ち合わせ部分を大きく重ね合わせるデザインなので、シングルのスーツに比べ、Vゾーンが狭いというのが特徴で、生地全体(特に前身頃)の面積が大きく、体を大きく見せる効果があります。そうすることで、見た目で重厚感を生み、威厳を高めるといった効果があるといわれています。
また、落ち着いた雰囲気を出す事ができるので、「童顔で年齢が若く見られて悩んでいる...」といった方にもおススメです。
胸の厚みをより強調するために作られたデザインなので、よりたくましく男らしい印象になります。
このお悩みをお持ちの方も多いとは思いますが、胴回り全体を覆うのでおなかの出っ張りが気になる方にもおススメです。
そして何より見た目が上品なのでパーティーやデートなど華やかなシーンにはピッタリです。
ダブルスーツの着こなし方
Vゾーンがシングルスーツと比べ狭いため、大柄や線の太いものよりは強調しすぎない細くシンプルな小柄や無地のものを選ぶといいでしょう。
お腹まわりを絞り、よりシェイプを利かせ逆三角形を作ることで、よりたくましく見せることができます。
ジャケパンスタイルも増えています。これからの時期であれば明るいライト系の色やシルクやリネンといった素材の組み合わせも楽しめますね。
フォーマルシーンでダブルブレステッドを着用する際のマナー
徐々に浸透しつつあるダブルですが、フォーマルシーンにおいては少し状況が違います。
今回は略礼服に限定してお話してみますが、オーダースーツに比べて流行の振幅がゆっくりした礼服では、つい10年くらい前まではダブルの礼服が主流でした。ここ10年くらいの間にシングルの礼服がやっと一般的になってきたという感じです。
ですので、ここまででお話した6釦2つ掛けのウエストを絞り込むデザインの礼服はまだあまり見かけることがありません。
まだ完全に定着したわけではないので特にフォーマルなシーンでは慎重になる必要があります。
▲結婚式…友人の結婚式はOK、会社の方、上司の方の式だと少し偉そうの見えてしまうということもありますので、状況に応じて着用しましょう。
▲葬式…シングル、ダブルどちらでもマナー違反にはなりませんが、黒が基本ですのでどちらも礼服の生地に限ります。
基本的にはシングルとダブルの二つに格式の差はありませんが、フォーマルでの着用という観点においては使い分けが必要でしょう。
まとめ
この先、シングルと同様にダブルが浸透し定番化してくると今後ビジネスのシーンでのコーディネートの幅も広がりますね。
これまで、シングルしか着用されたことがない方もこれを機にダブルに興味をお持ちいただけると幸いです。
ワンランク上の大人の品格を醸し出すダブルのオーダースーツはいかがでしょうか。