英国を代表する生地メーカー「ハリソンズ・オブ・エジンバラ」のJames Dunsford社長が、なんと広島えびすテーラーに来店されました。
英国から海を渡り実に9,000km以上の遠路はるばる、こんな小さなテーラーにお越しいただくなんてとても感激です。
ハリソンズ・オブ・エジンバラとは
ハリソンズ・オブ・エジンバラ(Harrisons of Edinburgh)というのは生地メーカーの名前です。
オーダースーツの生地は様々な国で作られていますが、その中でも英国製とイタリア製は生産量も多く、クオリティやセンスにおいて群を抜いています。
イタリアを拠点とする生地メーカーには、あのErmenegildo Zegna(エルメネジルド・ゼニア)や当店でも人気のCanonico(カノニコ)、他にもLoro PIana(ロロ・ピアーナ)やDrago(ドラゴ)などがあります。
英国はDourmeuil(ドーメル)、Fox Brothers(フォックスブラザーズ)・・・などがありますが、Harisons of Edinburgh(ハリソンズ・オブ・エジンバラ)は英国でも1、2を争う伝統と歴史のある生地メーカーです。
1863年、後のエジンバラ市長 サー・ジョージ・ハリソンによって創設された名門マーチャントで、トレードマークでもある赤いバンチで展開される豊富な服地コレクションは多くの名門テーラーで取り扱われ、欧州の王侯貴族をはじめとした世界中のVIPから愛されています。
お土産をお渡ししました
実は来られることはあらかじめ分かっていたので、お土産で悩みましたが、Oスタッフのひらめきにより宮島のしゃもじに決定しました。
数日前、宮島に渡って「商売繁盛」の文字と「針尊洲(はりそんず)」(笑)と書いてもらったしゃもじを外国人観光客に混ざりながら購入。
そういえば、学生のころから含めて宮島に渡ったことは何度もありますが、まともにしゃもじを買ったのはこれが初めてかもしれません。
まずはこのお土産を渡しながらしゃもじの意味などを説明。漢字で書いた社名で笑いも取れたし、何より喜んでもらえてとても良かったです。
ハリソンズの社長からしか聞けないストーリーを色々聞くことができました
まずは、ずっと知りたかったけど誰にも聞く機会がなかったことを聞いてみました。
英国製とイタリア製、それぞれの生地の持つテイストの違いとその背景です。
あくまで一般的にですが、英国製生地は厚みがあって張りがあり、またずっしりとしていて質感、重厚感に優れているのが特徴です。
一方イタリア製は、極細の繊細な生地でツヤやドレープ性に優れ、上質なウールの自然な光沢からくる滑らかさや、着た時のドレープ感が特徴です。
どちらが良いと決めつけることはとても難しく、それぞれの生地が持つ良さを生かしてオシャレを楽しんで行くスタイルがおすすめです。
私「日本人と英国では同じ島国ということもあり、それほど派手派手しくないものを好む傾向があると思いますが、実際のところどうですか。」
Dunsford氏「そうですね、似ているところはあると思います。イタリア製の生地メーカーでは毎年新しいバンチブックが発表され、華やかで大陸的な香りのするものが多いです。それはそれでとても素晴らしいことなのですが、英国では少し違います。」
私「それはどういうことですか。」
Dunsford氏「歴史やストーリーを重んじるということです。例えばおじいさん、お父さん、子供と三代に渡って着ることができる。こういうことも英国セビルロウ通りで仕立てたオーダースーツの特徴ですし、それに耐えうる生地を製造し続ける必要があるということです。」
私「そういえば先日、10年着たハリソンズのフロンティアとファインクラシックスの生地がとても良かったので、またあらためて仕立てに来られた方がいらっしゃいました。」
Dunsford氏「そういうことです。30年でも着ることはできると思いますが、長い期間着るにはそれなりの耐久性やシワの復元性が必要だということです。ですから、クラシックなバンチブックはリニューアルをそれほど頻繁にはしません。着続けているうちにパンツがダメになったからもう1本作ってくれといったお客様のご注文にこたえる事が出来るように、ストックしておく必要があるのです。」
たしかに、ハリソンズをはじめ、フォックスブラザーズなど歴史のある生地ブランドではバンチブックのリニューアルの頻度は低めです。
と言いながら、気付くと話は来春から新しく展開するシリーズの紹介になっていました。
Dunsford氏「伝統と歴史を重んじながらも、古臭いことだけではだめ。新しい事へのチャレンジも大切なんだ。」
ハリソンズ・オブ・エジンバラで人気のシリーズは
あと必ず聞きたかったこと。
私「広島えびすテーラーでは「Fine Classics」と「Frontier」の2種類が圧倒的に人気ですが、英国ではどうですか?」
Dunsford氏「FrontierもFine Classicsもどちらもとてもメジャーですね。特にフロンティアは生地の張りもあり、オールシーズンで着ることもできるので、日本の他にも、ドイツやフランス、イタリアなど5か国でとても売れていますよ。」
来春からスタートする新シリーズでは、英国伝統のウールにリネンを加え大陸的な雰囲気を作っています。伝統のあるビスポークでの生地の選ばれ方を中心に置きながら若い人でも着やすいデザインでラインナップされているそうです。
きっと春には広島えびすテーラーでも登場しそうですね。
そういえば、会話の中で何度も聞こえた大陸的という言葉。
日本から見るとなんとなくヨーロッパは一つのような気がしていましたが、そうなんですね、英国から見るとイタリア・フランスなどは大陸です。大陸的なものと英国的なものにはモノづくりの面から見ても大きな差があるんだなと感じました。
英国を代表する生地メーカー、ハリソンズ・オブ・エジンバラのDunsford氏は、今でもセビルロウ通りを歩くのが好きだそうです。
時々はひょっこりセビルロウ通りのテーラーさんに顔を出しては雑談に花を咲かせるとか。
「次はイギリスに来てください。VIP待遇しますよ。」
とおっしゃっていただいたので、いつか必ず伺いますとお答えしました。
Dunsford氏はまだまだ若いのに、とてもしっかりとした信念と行動力を持ったすばらしい人でした。
そしてとてもフランクで話も面白く、洋服の話をするときなどとてもキラキラして、それでいて真剣で、とても充実した時間を過ごすことが出来ました。
「ありがとう」の思いをしゃもじに込めてお渡ししたので、きっとハリソンズの社長室に飾ってくれることでしょう(笑)