社会人になると「礼服を持っておかないといけない」シーンがしばしばあると思います。
親族や友人の婚婚式、お子様の入学式や卒業式、会社の式典などのおめでたい席、時には葬式や告別式などのお悔やみの席に出席したりと、さまざまなかしこまったシーンに出向く機会が増えてきます。
そこで疑問の多いフォーマルなシーンにおいての着用すべきもの、その着こなしをいくつかの回に分けて説明していきたいと思いますが、まず今回はご質問の多い結婚式での着こなしについて書いてみようと思います。
目次
そもそも礼服とは
冠婚葬祭では、主に礼服と呼ばれる黒色のスーツを着用するのが一般的です。ただ一口に礼服といっても執り行われる場所や格式時間帯によって着用すべきものが決められており、その種類も様々で本来はシーンに合わせて使い分けるのがマナーとされています。
その上、呼び方がたくさんあるので非常にややこしいです。
本来、礼服は略礼装・準礼装・正礼装の3つに分かれています。
●略礼装:いわゆる黒無地のフォーマルスーツ(量販店などで売られる一般的な礼服にあたります)
●準礼装:昼はディレクターズスーツと呼ばれる略礼装と同じジャケットにコールパンツというシルバーグレーとブラックのストライプ柄のパンツ。夜はタキシード。結婚式で乾杯の挨拶を行う方はこの準礼装の場合が多いです。
●正礼装:昼はモーニングコート。夜はタキシードや燕尾服(テールコート)。結婚式で両家の親がする装いです。格調の高い結婚式や国家式典などでも使われます。
日本ではいつしかフォーマルスーツ=略礼服というのが定着しています。これは間違いではありませんが、場所やシーンによってはマナー違反になることもあるので注意が必要です。近年においては決まりやマナーもあまり厳しくないのも事実ですが、知識として持っておくといざという時に役立ちます。
普段の生活の中で一般的にイメージする礼服というのは略式の礼服“略礼装”とされており、礼服のなかでは最も格式が低いものとされていますが、結婚式は白やシルバーのネクタイと合わせ、葬式の際は黒いネクタイといったように、着けるネクタイの種類で、様々なフォーマルなシーンに対応できる大変便利なものです。
また、黒の無地のスーツが礼服(略礼装)だと思っている方も中にはいらっしゃるかと思います。一見同じように見える黒いビジネススーツと礼服ですが、実は全くの別物。見比べれば、その差は一目瞭然です。
礼服はフォーマル専用の生地で普通のスーツよりもさらに濃い黒色になり、光沢もありません。そして襟の部分やポケットの蓋の部分に縫い目のあるステッチと呼ばれるデザインもありません。
黒色のスーツは礼服と比べると一段色が明るくなり装飾があるものも中にはあります。
同じ黒のスーツだからといって普段ビジネスで使っているスーツを着ていくと、周りとの黒さの差やデザインの違いで恥ずかしい思いをしてしまうので注意しましょう。
結婚式には何を着ていけばいいの?
結婚式では場所や格式で装いが異なりますが、年齢や新郎新婦との間柄によっては礼装以外のスーツでも良い場合もありますので、間柄別で紹介してみましょう。
親族
結婚式を挙げる本人の親族であれば、主催者側ということになるので一般のゲストより格調の高い装いをすることを心がけましょう。その際の装いは前もって親族と相談しておくのがいいでしょう。
ご兄弟や姉妹が結婚される場合、ご自分が学生や20代前半の若い世代の方であれば、柄の無い無地の”ダークスーツ”などので問題ないのですが、就職してすでに働いていたり、相手の親族側がスーツで揃えて出席する場合は、いわゆる一般的な礼服”略礼装”と言われる無地のブラックスーツが基本です。
ご自身が新郎新婦の親の立場の式の場合は正礼装(モーニングコート)となります。
新郎新婦の上司や学生時代の恩師に当たる場合、また主賓として出席
この場合、両家のゲスト代表ということになるので、服装のマナーには十分に気を配る必要があります。
新郎や親族よりも格が高くならないように、且つゲストの中ではより格が高い装いをしなければなりません。
略礼服で出席する場合も多いですが、準礼装(ディレクターズスーツ)の場合もあります。
学生時代の友人、幼馴染、お仕事先の同僚
こちらが一番多くあてはまるケースではないかと思いますが、最近では一般的なブラックスーツの他にもネイビーやグレーのスーツも人気ですし、あまり目立たないストライプのものを着用しても問題ありません。
ストライプ柄やドット柄などの爽やかな柄のネクタイを付けるとより華やかにきまります。
またフォーマルなシーンなので、ベストを加えたスリーピースで出席される方も多いようで、選ぶ幅が広くなってきているようです。
通常のゲストとして出席する場合において、普段使いのスーツで出席しても問題ないですが、シャツやネクタイをいつもの通勤スタイルより華やかに、ヨレやシワもしっかり取って着用しましょう。
家族ぐるみでの付き合いで、夫婦で出席
この場合は夫婦で服装の格を揃えるとより好印象です。
男性は”ブラックスーツ”に、女性はブラックカラーもしくはダークカラーのワンピースの”セミフォーマルドレス”を選ぶのがいいかと思います。
また、おそろいの小物を付けることでより華やかさが増すのでおススメです。
友人代表としてゲストの前でスピーチ
この場合は、友人なので準礼装や略礼装でなくても問題ありません。
但し、友人代表として大勢のゲストの前に立つわけですから、上品で清潔感のある印象でスピーチを行うのが好ましいです。
また、チーフやラペルピンなどでアクセントを加えてよりドレッシーで華やかな装いでスピーチしましょう。
シャツやシューズ、小物にも気を配りさらに華やかに
ポケットチーフ
ジャケットの胸ポケットの挿す布のことで、ネクタイの色と合わせると統一感が出ますし、より華やかになります。
ネクタイピン
ゴールドやシルバーのものを付けると普段のビジネスシーンとは違いスーツを華やかに演出することができます。
ラペルピン
若い方であれば花のモチーフやチェーン付きのものをつけると、落ち着いたデザインのものを
カフリンクス
ネクタイピンやラペルピンと同様に、結婚式にはピッタリのアイテムです。付けることでよりドレッシーになります。
シャツにも気を配ると一層カッチリします
基本的には白のレギュラーカラーもしくはウィングカラー(蝶ネクタイでお馴染み)のシャツですが、3ピースのスーツの場合や二次会などのややカジュアルなパーティには爽やかな色のシャツを組合わせるのもいいでしょう。
また、ボタンダウンや襟の短いタイプのシャツはカジュアルな印象を与えてしまうので結婚式では控えましょう。また、季節に限らず会場が屋内であれば必ず長袖のシャツを着用しなければなりません。
シューズは基本的にシンプルな黒で
靴は黒のひも付きの”ストレートチップ”や”プレーントゥ”が一般的です。ウィングチップや模様が入っているデザインの物はカジュアルなイメージが強いので控えましょう。
靴下も黒で統一しましょう。
注意点 基本的にNG
白いスーツやタキシードは新郎新婦よりも目立ってしまうので避けましょう。
黒いシャツは、お祝いの場にはふさわしくないカラーなので避けましょう。ダークスーツに白の靴下もNGです。
その他にも、不幸を連想させるデザインのものや黒やアニマル柄のネクタイ、レザーを使ったジャケットなど殺生をイメージさせるものもNGです。
まとめ
礼服といっても種類は様々で、シーンや場所、時間帯によって着用するものが異なるので、注意が必要です。
親族の場合、ごく一般的な披露宴であれば昼夜関係なく着用できる、光沢のない黒色の無地の”略礼装”を選ぶ人が多いようです。この”略礼装”を一着持っておくことで様々なシーンで着用することができます。
新郎新婦の友人であれば、ダークスーツ(暗めのネイビーやグレー)、またそれらにベストを加え三つ揃いにすることで一層フォーマルに演出することができるでしょう。
年を重ねるごとに礼服とスーツを使い分ける事が多くなってくると思います。近年においてはあまり厳しく決まりがないのも事実ですが、これらを知識として頭に入れておくと、いざという時に役立つと思います。