【CANONICO　21マイクロン】

 

昨今の人気の生地の傾向

 
最近のスーツ生地のトレンドは、軽やかさよりも「強度」の需要が高まっています。これには様々な要因が考えられますが、代表的な理由はスーツのシルエットの変化が起きているという事が大きいと思います。10年前くらいから主流だった、スリムフィットなスーツスタイルから、古き良きを感じるようなクラシックスタイルへと、スーツスタイルが変化してきました。タイトフィットの時に人気だったのは、柔らかな肌触り、軽いストレッチ性を兼ね揃えた物でした。カノニコ社で例を出すと、通年着で使えるような軽やかな【Perennial】というシリーズが代表的な物でしょうか。

 

タイトシルエットからクラシックスタイルへ

 
タイトなシルエットを出すためには、体への密着度等を考えると、生地の柔らかさはとても重要なポイントになります。体と生地の隙間が少ないのでもしも生地に柔らかさがなければ、動きに制限ができ、着心地はあがりません。ビシッとスリムなスタイルを出すためにも、柔らかな生地は重宝されたのです。しかし柔らかな生地にも欠点があります。柔らかさを出すためには、使用する糸を薄くする必要があります。薄くするという事は、単純に考えても強度はあがりません。それでいてシルエットはタイトになっているので、より生地に負荷がかかり、最悪の場合は破れが起きてしまうこともあります。修理のご相談で多いのがスラックスの修理、特にお尻の破れの修理が多いです。上半身よりも下半身の方が負荷がかかることが多いので、スラックスの修理ご希望が多いのも当然の事です。それでもタイトフィットなスタイルは今でも主流といえるくらいに浸透しています。そんな中、数年前から新たなスーツスタイルが脚光を浴びるようになってきました。今までのスリムなシルエットから、クラシカルで程よいゆとりのあるスタイルです。

 

クラシカルなスタイルの代表国といえば英国です。言わずと知れたスーツの元祖、始まりの地です。今までの主流だったタイトフィットとは違い、上着のウエストはグッと絞るのではなく、自然なシェイプにし、パンツはノータックではなく、プリーツを入れて履くスタイルが、徐々に増えてきました。それに合わせて、生地の方も今までの主流だったイタリアの柔らかな生地から、イギリスのハリのある生地へと需要が変化していきます。イギリスの生地は、イタリアの生地に比べ、ハリとコシがあり、強度はグッとあがります。タイトなスタイルだとイギリスの生地は強度が強すぎて逆に動きづらくなってしまうという欠点がありましたが、程よいゆとりをもたせるクラシカルなスタイルには、イギリスのハリのあるが相性抜群となります。そうした経緯で、今まで主流だったイタリアの柔らかな生地から、イギリスのハリ、コシのある生地へと、人気が変わっていっているのです。

 

スーツのスタイルの変化と共に、求められる生地の種類が変化していく中で、イタリアの生地メーカーも、しっかりとニーズに応える、時代に合った生地作りに力を入れていきます。タイトルにある21マイクロンシリーズが、代表的な例となります。では21マイクロンとはどういった生地なのでしょうか？

 

21マイクロンとは？

 
マイクロンとは糸の太さを表す単位となっています。数字が小さいほど糸は細くなり、大きくなれば糸は太くなります。ページの頭で紹介している、滑らかな肌触りのカノニコ【Perennial】という通年仕様の生地をマイクロン表示にするとおよそ18マイクロンほどになります。イタリアの生地はsuper〇〇〇’ｓという表記で、使用している糸を説明していることが多いので、そちらの表記で例えると、18マイクロンで、super110’ｓ相当になります。より繊細な生地となるsuper150’ｓの生地となると、およそ16マイクロンといった具合に変わっていきます。一般的にスーツで使うsuper表記はsuper80’ｓくらいまで。そのsuper80’sで19.5マイクロンほどとなります。21マイクロンはsuper表記で表されないくらい太めの糸を使用しているということになります。太さを増すことでイギリスの生地にも負けない強度や、防シワ性が強くなり、上記のようなクラシカルなスーツスタイルに置いても、主役になるほどにまでなってきました。今までの主流だった、サラッと滑らかな生地とは、ガラッと表情を変えた生地になっているのが21マイクロンシリーズとなります。

 

まとめ

今までのソフトな生地よりも、イギリスの生地のような強度を求めた生地となった21マイクロンシリーズですが、ただ強度を強くするだけでは終わらないのが、常に新しいものを生み出す、ファッション業界の先導国であるイタリア。強度の中にも柔らかさを求めたり、遊び心のある色柄を揃えたりと、選び手を楽しませる生地作りを行ってくれています。サラッと着こなすスーツスタイルから、パリッと着こなすスーツスタイルへと、変化が起きている今のタイミングに、ぜひ21マイクロンシリーズでのお仕立てをご検討してみてください。